第1回 香水小説大賞応募作
2012年9月30日日程
作品提出・応募締切 2012年10月1日 必着
賞
●大賞 10万円、記念品(香水)
●副賞 3万円、記念品(香水)
●佳作 記念品(香水)
募集内容
テーマに沿った短編小説・掌編小説
【テーマ】
香水
※直接的に香水が表れなくても、香水を感じさせるものなら可
提出物
●1,000文字以内の作品
※純文学・ドキュメンタリー・ファンタジー・時代物・散文詩・ミステリー・SF・コメディなどジャンルは不問
※未発表オリジナル創作作品に限る
参加方法
主催者ホームページの応募フォームより投稿
参加資格
不問
著作権の扱い
その他
主催
武蔵野ワークス
応募先・問合せ先
香水小説大賞 実行委員 事務局 TR係
tel : 042-349-0078
2012.9.30投稿
「思い出すのは・・・」
ねぇ今も、街で振り返るよ。当時あなたが身にまとっていた香りに出会うたび。
キューっと震える心は、記憶の引き出しの奥のあなたを呼び起こす。
出会ったのは確か、真夏の友人宅での鍋パーティ。同じバイト先ということが判明、盛り上がったね。距離が縮まったのは、バイト先でのクリスマス会。結婚式風の演出で新郎新婦の役を仰せつかったけれど、まさかあなたが私たち二人を指名するよう根回ししていたなんて。あなたからの告白は、人生で一番、印象的。あれ以上には、まだ出会えない。
美術専攻のあなたは、私の世界に彩りをくれた。画家たちのこと、世界の美術館のこと…。(今でも私、現代アートが好きだよ)。長身細身、筋肉質。街を歩いていて、女の人の視線が集まるあなたは、本当に自慢の彼だった。いつも出かけるとき、玄関であなたが身につける小瓶の香りは、いつしかあなたの代名詞になった。背の高いあなたを見上げる私に「ん?」と顔を近づけてくれる瞬間、包まれるその香りは、毎回私をどぎまぎさせた。スラリとした指も、半袖から覗く腕の血管も、字の上手さも、整えたヒゲの形も、全部どストライク。ううん、あなたの中に、私の好みを見出していたのかも。
きっかけは、内容も覚えていない小さな喧嘩。お互い引くに引けず、素直になったときには、手遅れだった。あなたを忘れられた、と思うころ、たまたま出会ったあなたの傍らには、知らない女の子。あなたのあの素敵な香りには、強いタバコの匂いが混じる。瞬間、全てを悟った。もう終わったんだ。実はあなたも復縁を願っていたと聞いて、意地っ張りな自分を呪った。
さよなら、私の大好きだった人。涙枯れるまで、泣いた。
卒業後しばらくして、あなたが結婚したという話を聞いた。心から、おめでとう。昨今のご活躍は、ネットで拝見しているよ。当時あなたが描いてくれた私の絵は、あなたの気持ちが痛いくらい伝わってきて、今もまだ直視できない。あの時に戻れたら、20歳の私に、素直になれってアドバイスしたい。 そしたら、違う人生歩んでいたかも、なんてね。
街ですれ違う、あの香り。思い出すのは、甘くて酸っぱい、幼なかった私の恋。
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